こんにちは、祥多です。
だいぶ間隔があいてしまいましたが、今回も前回同様ミドリイシの飼育環境についてご紹介いたします。前回はミドリイシに適した水質や、その水質をを作る機材をご紹介させていただきました。水質はミドリイシを飼育する際の最も重要とされるポイントで、そこが上手くいかないと次の段階に進むのが困難となります。
本日ご紹介するのは、ミドリイシの鮮やかな状態を保つのに必要不可欠な蛍光タンパク質と褐虫藻についてのご紹介となります。
どちらもミドリイシを飼育するにあたりとても重要なことなので是非参考にしてください。
まずは蛍光タンパクからご紹介いたします。
ミドリイシをはじめとしたサンゴやイソギンチャクには、蛍光タンパク質という、光を吸収して発光するタンパク質を持っています。この蛍光タンパクがサンゴの鮮やかな色を作るポイントとなります。
蛍光タンパクは主に低い波長(短波長)の光に反応しやすいとされています。
上の図のZichtbaar lichtと表記されている、約400~750㎚までの部分が可視光線(可視スペクトル)と言われる人間の目に見える光の色です。それより低い波長がUV(紫外線)、高い波長がIR(赤外線)になります。光エネルギーはUV>IRで強くなります。そのため多くの蛍光タンパク質は、UV~500㎚までの短波長の数値に反応しやすくなります。簡潔にいえば、青い光を当てることによってサンゴが発光するケースが多いということです。ここで注意する点は、当てた光の色を発光するわけではないという点です。蛍光タンパクは、光を吸収したのちに発光しますが、吸収したときより発光するときのエネルギーが低下します。そのため、UVのような短波長(強い光)を当てても、多くのミドリイシが当てた光より弱い緑色などに発光するということです。ミドリイシという名前にもうなずける現象です。
続いては、ミドリイシの水質でもお話しした褐虫藻についてです。
褐虫藻とは、大きさ10マイクロメートル(0.01㎜)ほどの褐色の藻類です。サンゴなどの無脊椎動物の細胞に共生し、光合成をおこなうことで宿主(ミドリイシ)に栄養を供給する生き物です。そのため、褐虫藻が減ったり、単離することでサンゴは栄養源を失い、白化しやすくなります。
ここで疑問に思われた人も少なくないと思います。前回の水質の話では、この褐虫藻の抑制を目的とした水質がミドリイシ水槽の理想環境と話していたのに、一体どういうことなのかをご説明させていただきます。
褐虫藻による光合成は、ミドリイシの生態に大きく関係しています。基本的にミドリイシは、褐虫藻の光合成で生産されるエネルギー補給以外に、ポリプによる動物性プランクトンの捕食、海水に含まれるミネラルの補給が可能ですが、光合成による栄養摂取量は全体の約80%以上となります。そのため褐虫藻を減らすことでミドリイシの健康状態は低下すると言っても過言ではありません。しかし、褐虫藻を増加させることが一概に良いとも言えません。褐虫藻が増えすぎた場合、宿主であるミドリイシに栄養がいきわたらず栄養不足になってしまうケースがあります。自然界のミドリイシは、バランスを保つために増えすぎた褐虫藻を追い出す、吸収することができるようなのですが、不安定な水質や弱った状態では困難になってしまいます。
また、褐虫藻が増加することで、ミドリイシが茶色くなりやすいということです。実際には、褐虫藻の密度が増し茶色く見えます。つまり褐虫藻の少ないミドリイシは鮮やかな色を引き出しやすいということになります。
そこでポイントとなるのが、硝酸塩やリン酸塩を抑えることで必要以上の褐虫藻をミドリイシから単離させること、ポリプから多くの栄養(餌)を吸収させることの二つです。豊富な栄養をポリプから与えることで、褐虫藻から本来得るべき栄養(タンパク質やアミノ酸など)を補い、前回の水質の作り方でミネラル(カルシウムやKH)を補給させることで、褐虫藻の低減による白化を防ぎ、鮮やかな色を維持しやすい環境を作ることができます。
他にも褐虫藻の特徴として、青い光を嫌い、緑色の光を好む習性があるという研究結果が出ているようです。光の色を上手く調整すれば褐虫藻の量をコントロールできそうです。
以上のことからミドリイシの鮮やかな色を保つことに、蛍光タンパクと褐虫藻が密接な関係にあることがわかっていただけたかと思います。
そして今回ご紹介した二つを最大限に活かすアイテムが照明になります。
自然界では太陽光によってサンゴの鮮やかな色彩が保たれています。水槽内で太陽光の代わりとなるのが照明です。従来はメタルハライドランプという高輝度の照明が主流でした。現在では、流通量が減りレアアイテムとなっています。では、メタハラが入手困難な中でどうやってミドリイシを飼育すればよいのでしょうか?
メタハラに代わって、現在ミドリイシ飼育用の照明となっているのがLED照明です。メタハラが主流の時代からLED照明は存在していましたが、光量の問題から当時のLEDではミドリイシの飼育は困難と言われていました。しかし現在では、メタハラに勝るとも劣らないフルスペクトルLEDという照明が誕生しました。
フルスペクトルLEDとは太陽の演色性を再現できるLEDのことで、紫や青、緑、赤などをはじめとしたさまざまな波長を自在にコントロールでき、紫外線に近い光を作るLEDも存在します。そのため、幅広い種類のミドリイシに対応しているのもポイントの一つです。また近年では、スマートフォンからの操作が主流となり、光量や光彩のバランスをはじめ、タイマーなどの様々な機能をスマホで一括操作できるLEDが増えています。デザインもスタイリッシュなものが多く、インテリアとしても優れた照明が多いです。
ではどのようなLEDがミドリイシに適しているのか、ここで祥多オススメLED照明をご紹介します。
volx japan
GrassyCoreReef
グラッシーレディオで有名なボルクスジャパンから発売されているシステムLEDです。専用アプリ「HME AQUA」を使用してスマホで完全コントロールする照明です。一番の特徴は「海域設定」で、世界の海域の太陽光を再現できる機能です。この機能を使用すれば、誰でも簡単にミドリイシをはじめとしたサンゴに最適な光を提供することができます。
当店でもメインミドリイシ水槽で3灯使用しています。蛍光タンパクだけではなく、ミドリイシの地の色も引き立たせることができる観賞用としても優れたシステムLEDです。
照射される光はリフレクターにより、広範囲に柔らかい光を照射します。LEDでミドリイシを飼育する際によく起こる問題、「焼け」のリスクも少ない照明だと思います。
スッキリしたデザインで水槽の美観も向上できます。取り付けはワイヤーかアームで環境に合わせて選んでいただけます。
RedSea
ReefLED
オーバーフロー水槽、REEFERで有名なレッドシーから昨年発売されたばかりのシステムLEDです。演色性の再現率を重視するLEDが多いなか、青と白の2色でミドリイシの育成や色揚げを可能とした話題のLEDです。簡単な操作以外は専用アプリ「ReefBeat」を使用し、スマホから調光するLEDです。オンライン状態にすることで、離れた場所からの操作、確認ができるのも魅力です。
当店ではフラグミドリイシの水槽に2灯使用しています。
本体サイズはコンパクトですが、独自のレンズで広範囲に光を拡散させることができます。青い光は、UVをはじめとしたさまざまな種類の光をブレンドしているので、細かい調光をせずにミドリイシを飼育できるのもポイントです。照射範囲の目安としては、画像のReefLED1灯で60cm水槽にムラなく光が届くイメージです。
当店で取り付けた時期は専用ワイヤーがなかったため、別のワイヤーを代用していますが、現在はアームとワイヤーの2種類を販売しています。RedSea商品ということでREEFERシリーズとの相性も抜群です。サイズは50Wと90Wの2種類がございます。
BlueHarbor
VitalWave
ミドリイシ用のスポットライトです。オーストラリアの人気固有種「ストロベリーショートケーキ」「スパスラータ」の色揚げに適した波長から、「トゲサンゴ」「ショウガサンゴ」などの蛍光タンパクの少ないサンゴに最適な波長まで、豊富なラインナップが魅力のLEDです。
当店ではReefLEDと一緒にフラグ水槽で活躍中です。システムLEDと併用することで、レイアウトの幅も広がります。
専用アプリ「ECOPTO」を使用することで、タイマーや出力調節もできる小型ながら非常に優秀な照明です。
他にも、様々な種類のシステムLED、スポットLEDを店頭在庫しています。販売しているほとんどのLEDを水槽で使用しているので、ご来店いただければ現物の使用感を確認していただくこともできます。
以上となります。
今回は、鮮やかなミドリイシを飼育するうえでとても重要な、「蛍光タンパク」「褐虫藻」「照明」についてご紹介させていただきました。
最後に今回ご紹介した説明につきましては、あくまで私の体験や感想、考察が中心となります。誤字や間違いが含まれている場合がございますが、参考程度にしていただけたらと思います。